【散策して、町の取り組みを始めて知った】
行田市での仕事が、早めに終わったので行田をぶらり探索することにしました。
行田で有名な「古代蓮」と、2015年にギネス世界記録に認定された世界一大きい「田んぼアート」を見るために「古代蓮の里」に向かいました。
今回の田んぼアートは、ラグビーワールドカップ2019™日本大会を応援する注目のデザインで、
今年で12年目になる田んぼアートは、年々精巧で美しくなっています。東会場の田んぼでは、日本代表のユニフォームを着た姫野和樹選手、リーチマイケル選手、田中史朗選手が、りりしく素敵な作品に仕上がっていて感動しました。
行田市は、映画「のぼうの城」のモデルの「忍城址(おしじょうあと)」、ドラマ「陸王」の実在のモデルになった会社やロケ地でも有名な市です。
都心から電車で1時間と近く、見るべき観光地もあり、自然豊かな良い町ですが、街の中心部の商店はシャッターが降りて寂しい状態です。少子高齢化や人口流出による人口減少は、埼玉県で1位(2019年7月1日現在)になっており、休耕地や空き家も目立つ状態になっています。
この状況を打開すべく、田んぼアートの活動はもちろん、行田市都市計画マスタープラン、行田市移住・定住プロジェクト、農業を始めたい人の相談の受け付け、子育て支援など様々な取り組みが行われています。
【人口減少による消滅可能性都市の危機と地方創生】
全国に仕事で出張しま
すが、地方都市にいくと中心街の商店はほとんどシャッターが降りており、人通りもほとんどなく、高齢者を時々見かける地域が年々増えているように思います。反対に東京には、人が流入し、一極集中のため街には人が溢れ、ラッシュアワーの電車の混雑がひどくなるばかりです。
少子高齢化・人口流出による人口減少や休耕地・空き家の増加などの各地の問題は、社会問題として日本全国に広がっています。人口減少で各地方自治体は税収が見込めずサービスや上下水道などの更新等の機能を失うことによる自治体消滅。いわゆる「消滅可能性都市」になる事態を避けるべく、これらの問題解決が喫緊の課題となっています。
日本の市町村数は合計1,741(2018年10月)ですが、政府は2040年には全国896の市区町村が「消滅可能性都市」に該当すると示唆しています。またそのうち523市区町村は人口が1万人未満となり、消滅の可能性がさらに高くなります。
東京一極集中を是正し、地方の人口減少・流失を防ぎ、日本全体の活力を向上させる国家戦略として、2016年より「地方創生」が推進されています。
【空き家率13.6% 無秩序に膨張する街造りは終わる時代に】
2018年10月に総務省が発表した空き家率は、過去最高の13.6%(住宅・土地統計調査)で、空き家戸数は846万戸となった。そのうち約4割の347万戸は長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅である。2033年には総住宅数の1/3が空き家になると予想されている。
人口の増加を見込んだ、郊外に無秩序に膨張させた街づくり、いわゆるスプロール化は終焉の時代にきています。かつては市街化調整区域の農地などを宅地にして家を建て、どんどん無秩序に街を拡充していく時代がありました。また、農地などの間に住宅が点在している状態をつくりだしました。
しかし、その団地もそこに住む人も高齢化し、車に乗れなくなると非常に不便な状態になっています。郊外には、住宅の価値や環境の魅力も下がり、売るに売れない家も存在しています。
おまけに、点在する住宅に上下水道、道路の公共投資をした場合、維持管理に多くの費用がかかり、自治体の財政負担が大きくなります。
しかし、未だに将来の予測もつかず、市街化調整区域に住宅販売を行い、安いからという理由で購入する人もいるのが実態です。
【市街化調整区域の住宅購入は注意が必要】
①市街化調整区域とは
市街化を抑制すべき区域。原則として開発行為や都市施設整備も行わない区域。建替え・増築・売却を極力抑える地域です。
②市街化調整区域の問題点
・建替え・改築は自治に開発許可を取る必要がある。場合によっては、許可が取れない可能性がある自治体もある。
・建築制限がある。
・ローンが降りにくい。
・売却が難しい場合や、価値査定が難しい場合がある。
市街化調整区域の住宅建築は、市街化地域と異なり、新築だけでなく中古住宅を購入・リノベーション時も注意が必要です。
【市街化調整区域で基準強化する自治体も出現】
和歌山市は、2019年4月1日付で住宅の拡散を防止するため、市街化調整区域内の50戸連たんの既存集落区域の
全域で分譲住宅等を認めていた基準を廃止しました。
埼玉県さいたま市や所沢市では市街化調整区域(都市計画法第34条12号)に住宅を建てることができません。
無秩序な住宅の拡散を防ぐために、市町村によっては市街化調整区域に住宅建築の許可を出していないが地域があります。そしてすべての自治体でなんだかの条件をクリアしないと開発や建築の許可が降りないようにしています。
このことでもわかるように、各自治体では「住宅地の拡散防止」が都市計画の課題の一つになっており、「コンパクトシティ」への取り組みがされています。
【国、自治体が推進するコンパクトシティ】
街が無秩序に拡散する中で人口減少や高齢化が進行し、空き家問題や都市のドーナツ化現象、さらには医療、交通、公共機能の弱体化を回避するために、住居・商業施設、医療施設、公共施設を中心市街部に集約させ、都市機能や居住地域をコンパクトにまとめる政策が推進されています。
「コンパクトシティ」にすることで、都市機能を維持し行政効率やインフラの維持管理更新の効率を高めることが可能になり、自治体消滅、消滅可能性都市から脱却する政策です。
今や「コンパクトシティ」は、各自治体の都市計画のメインテーマとなっており、富山市、熊本市、柏市では成功しています。
地域によっては「コンパクトシティ」構想に問題点や課題点があり、なかなか進まないケースもありますが、その地域特性に合わせた計画で誘導をしています。
【コンパクトシティから発展したコンパクトシティ・プラス・ネットワーク】
街が集約化され、 住宅や商業施設、医療・福祉施設などの生活サービス施設がまとまって立地した時に必要なのは、交通機関です。住民が公共交通や徒歩などにより、 これらの施設に容易にアクセスできるまちづくりの考え方がコンパクトシティ・プラス・ネットワークです。
つまり、コンパクトなまちづくりと地域交通の再編との連携により、『コンパクトシティ・プラス・ネットワーク』のまちづくりを進めることが課題となっています。
都市の再編ともいえるコンパクトシティ化や地方創生の動きの中で、住宅・リフォームもその方向性に合致した取り組みが必要になっています。集約される街の中の店舗・住宅等の既存ストックの活用は、街の雰囲気に適応した魅力的なデザインで、災害や火災に強いリノベーションも要求されることになります。
そういえば、今回訪問した行田市も街の活性化、コンパクトシティを都市計画マスタープランの政策にしています。
【行田は歴史の街、もっと知ってもらいたい町でした】
今回訪問した「古代蓮の里」の行田蓮(古代蓮)は女性の背丈ほどある高さで花も大きく見事です。しかし、訪れたのが午後からでしたので、花は閉じていましたが、それでもこぶしよりも大きくピンク色がとてもきれいでした。
田んぼアートは、南会場は「令和」改元を祝したデザイン、東会場は「ラクビーワールドカップ」応援のデザインで、色彩の異なる複数の稲を人の手で植え付けて文字や形を精巧に造る技術に驚きました。
忍城址も必見です。忍城は関東七名城の一つとされています。現在は、御三階櫓が城址に復元されており、資料館として公開されている櫓の上からは、行田市内が一望できました。
忍城は「浮き城」とも呼ばれ、豊臣秀吉の関東平定の戦いのとき、石田三成らによる水攻めで落とせなかったことで有名です。映画「のぼうの城」の舞台となっています。「浮き城のまち 行田」というキャッチフレーズは、忍城が由来です。御三階櫓は美しい櫓でした。
最後に、日暮れ前にどうにか「さきたま古墳群」に行くことができました。公園内には前方後円墳8基、円墳1基があり、古墳を目の前で見るだけでなく、丸墓山古墳、稲荷山古墳には階段がついていて上ることができ、古代の人の気分が味わえるように思いました。丸墓山古墳の上からは忍城も見えて感激しました。ちなみに埼玉という名称はこの周辺から発祥したということで、驚きました。
行田は歴史を語れる観光があり、誇れる歴史がある町であること。田んぼアートなどの町おこしの取り組みをしていることを初めて知りました。東京から近いので、もっとみんなに知ってもらいたい町だと思いました。
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2019年08月05日 20:10