今求められるレジリエンス住宅
レジリエンスという言葉は住宅業界にも定着
住宅にもレジリエンスという言葉が、普及するようになりました。
昨年、2019年度には、経済産業省資源エネルギー庁の新しい補助金として、ZEH+R強化事業(ZEH+レジリエンス強化事業)が出され、蓄電システムや太陽熱利用 温水システムにより停電時のレジリエンスを強化した再生可能エネルギーの自家消費拡大を目指したZEHに最大215万円/戸が支援されました。
令和2年の環境省の予算案の中にも「災害対応の観点から、停電時にも必要なエネルギーを供給できる機能を強化したZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)・ZEH (ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の更なる普及を進める。」と記されており、令和2年度もZEH+R強化事業(ZEH+レジリエンス強化事業)は行われる予定です。
多くの住宅でのレジリエンス機能
レジリエンスの機能を持つ住宅は、ZEHだけでなく、一般的な住宅にも普及しています。
現在、一般的に多いタイプのレジリエンス住宅と言われるものは、普段はエネルギー使用量を削減し、災害時に停電しても自立的にエネルギーを供給して、復旧するまで不自由なく過ごせる設備のある住宅です。
つまり、太陽光発電システムのついたスマートハウスに、余剰電力を溜めて停電時に電力を使用できるようにする蓄電池、エネファーム、電気自動車等の設備を設置して、レジリエンス機能を持たせた住宅です。
「レジリエンス」は本来はどういう意味?
レジリエンスとは、心理学で使われる言葉です。
本来の意味は、変形から元の形に戻ろうとする「弾力性」、変化や変動に対する反応としての「復元力」や「回復力」です。「折れない、しなやかな心」というような「逆境から立ち直り、適応できる能力」という意味合いで使われています。
そのレジリエンスという言葉は、東日本大震災以降に防災に対する言葉として公に使われるようになりました。災害など想定外の事態で社会システムなどの一部の機能が停止しても、「全体としての機能を速やかに回復できるしなやかな強靭(きょうじん)さ」を表わす言葉として使われています。
現在、防災・減災の考えに基づき、強くてしなやかな国をつくる国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)の取組みを強化するということが日本の課題であり、令和2年度の国土強靱化関係予算概算要求の概要では総額約5兆円が計上されています。
CASBEEのレジリエンス住宅チェックシートでの気づき
CASBEEで、一般の方が行う健康や災害に備えるチェックリストとして、「レジリエンス住宅チェックリスト」がつくられています。
「住まいや暮らしのレジリエンスを高めるためには、健康や災害に関するリスクを知り、備えておくことが大切です。(※CASBEEホームページより)」とし、次の3つの観点から「住まいのレジリエンス度」を確認する42項目のチェックリストをWEBで公開しています。
■3つの観点
平常時の「免疫力」
災害発生時の「土壇場力」
災害後の「サバイバル力」
このチェックリストには、次のことが問われています。
・家の断熱性(ヒートショック等)
・メタボなどの健康リスク
・階段・段差のバリアフリーや危険回避の常夜灯や人感センサー有無
・創蓄
・住宅メンテナンス
・耐震基準や地震の備え
・火災延焼リスクや津波・洪水・浸水などの災害リスクと避難や避難グッズ
・防災情報の手段
・停電時の備え
・災害時の断水・食糧・トイレ
・避難や防災訓練
・建物倒壊の危険判定ステッカーの知識や地震保険
CASBEEの「レジリエンス住宅チェックリスト」で、レジエンス住宅とはどのようなものかが把握できます。
創蓄を設置した住宅だけをさすのでなく、日常は危険を回避し、安心・安全・健康に暮らせる省エネ性、バリアフリー性がある住宅が基本で、耐震性が良く、地震に備えた住宅で、常にメンテナンスをして災害時に安全な家であること。災害時のリスクから守れる住宅であることが望まれます。
また地域の災害リスクを把握し、災害に備えて水・食糧を備える場所を確保し、また災害時には創蓄によって自立したエネルギーを供給できることが、住まいのレジリエンス強化となることが理解できます。
家の基本性能を満たしたうえで、さらに災害時に命を守る対応ができ、災害時にも自立して生活できる住まいが、レジリエンス機能を持った住宅として望まれます。
※CASBEEの「レジリエンス住宅チェックリスト」はCASBEEのホームページに掲載されています。